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希有な夫婦、普通の夫婦 ?

「作曲家・武満徹との日々を語る」 武満浅香 (聞き手・武満徹全集編集長)

 奥さんだった浅香さん、やはりあっての、武満徹だったこと、それは谷川さんインタビューの対話集でも感じられたけれど、まさにそのとおりだし、それは浅香さんにしても同じこと、武満徹あっての生活だったのだという感想を持つ。単に仲のよい夫婦、という描写だと貧困になる。
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 武満さんはラジオの「青春を語る」のなかで、「もちろん、いまはお互いいろいろ不満もあるでしょうが・・」と当たりまえの夫婦であることを感じさせる言葉も率直に言っていたけれど、武満さんの底にある無邪気さ、浅香さんのある種、楽天性、柔軟さとがうまい具合に噛み合ったものだなあと御夫婦の歴史を聞いていて思う。

 たとえば喧嘩の時、「お金があったら離婚する」と徹さんが言えば、「じゃあ慰謝料くださいね」と浅香さんが言うとする。徹さんは「だからできないんだよな」と部屋を出て行く。浅香さんはけっこう落ち込んでいる。しばらくすると徹さんは「ねえねえ」とさっきのことは忘れたように話しかけてくる。

 インタビューする編集者の大原さんの柔らかな問いかけといい、そこには気持ちのよい程度の親密さもあって、浅香さん御自身が、過去のふたりの生活をまるで昨日のことのように鮮明に正確に思い出しながら、気持ちも流れるように語られているのが読者にそのまま届く。

 徹さんのなき日々を、「悲しい」というよりも「つまらない」と浅香さんは言う。
 「しゃべったり、けんかしたり、そういう仲間がふっといなくなった、何かあったとき感想も言いたいし、文句も言いたい・・。それを言う人が、いなくなったというのがね・・」

 どうでしょう、ごく普通の夫婦のようで、あながち現代はすごく幸せな御夫婦だったということなのかもしれない(笑)。

 もちろん、いちばん身近からの証言、音楽家・武満徹の様々な出会い、曲が生まれて来たその時代をたどることのできる貴重なインタビューでもあります。
Commented by falanx at 2008-04-05 23:35 x
エントリー記事の内容と関係ないことを書いてしまいますが、いまNHK衛星で黒澤明の「羅生門」を観終わったところです。
いやー、すごかった。
実は、僕は過去に2度だけ、テレビ放送とレンタルビデオで羅生門を観たきりだったのですが、初めて観たテレビ放送が中学生の時とかで、正直いままで、「用心棒」や「七人の侍」の映画みたいにピンとこなかった。
僕は黒澤映画では「椿三十郎」が一等賞のタイプの映画ファンなので、そういうことだと思うんだけど、なぜか羅生門をビデオとかで積極的に観ようという気になれなかった。

羅生門は黒澤映画のなかで最も革新的な作品だったと思った。映画製作の実験的な技法の数々のみならず、内容のまるでギリシャ悲劇やシェイクスピアみたいな普遍的であるところの革新性。
僕の好きな言葉を使ってしまうと、こりゃプログレだと思った(笑)。
とうぜん話題のカメラはスゴイし、三船・京マチ子・森雅之の演技も、以前はそうは思わなかったけど、やっぱりスゴイ。
脚本や演出がアイデアのかたまりというか、深い深い。

これからNHK衛星で黒澤映画を観られるのでルンルン気分になってしまった。浮かれている。
Commented by past_light at 2008-04-06 20:09
falanxさん、しばらくです。
「羅生門」やっていましたね。ぼくは録画しておきました。
ぼくも三度ほど観ているかと思いますが、黒澤の映画の中ではいちばん芸術性が高いんだろうと思いますし、たしかに当時ではとくに前衛的な感じがしただろうなあと思います。
日中の陽の光ととか、木もれ日、むんむんとした現場など、、カッと割といい印象的で、目に焼き付きます。
「椿三十郎」はぼくも好きです。
それとちょっと異質であんまり評判別れているのが「どですかでん」なんですが、ぼくは舞台と展開するドラマ、それにハレーションをおこすような色彩が好きで、もしかしたらいちばん好きな映画かもしれません。
黒澤映画は今年中に全部やるようですから、楽しみですね。
by past_light | 2008-04-02 01:10 | ■コラム-Past Light | Trackback | Comments(2)

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