「うた うたうたいうたい うたたねうたこ うたえない」

 だいぶ前につくったフレーズですが、まあ、そんなことはそれとして。

 「翼」が聴きたくなったので、小室等さんの武満撤ソングブックを借りていた。本当は石川セリさんの歌で聴きたいと思ったんだけど、そんなことはそれとして。
 ブックレットには、いくつも詞を提供していた谷川さんが紹介文を書いていた。

 『武満はね、音楽にクラシックとかポピュラーとかの区別はつけない人でした』
 それに『演歌は大嫌いだと言いつつ、ある拍子に歌い出すと呆れるほど歌い続けた』と谷川さんは言う。

 イギリスの大学でか、コンサートの中で、武満さんのつくった歌の合唱が演奏されたとき、聴衆からブーイングがあった、と後日武満さんは谷川さんに笑って話したという。
 『マタイ受難曲とビートルズの歌を同じように愛していたことを学生達は知らなかっんでしょうね』

 武満さんのジャズ好きは有名だったようだが、自分の曲作りには、それはまったく反映してはいない、と言っていたそうだ。


 ふと思い出したことで、むかしまだCDじゃなくてレコードジャケットが大きかった頃、レコード店で棚から抜き出して眺めるのは楽しかった。
 となりにあるクラシックの棚を見ていた、ふたりづれの女性のひとりが、こちらのポピュラーの棚にあるレコードのジャケットをあごで指し示して、軽蔑したように連れの女性と笑っていた光景があった。

 ぼくはわりとなんでも聴く方だが、さすがに演歌も、今はハードなロックや、まして小刻みなラップは聴かないが、それはいわばただこの時この場の体質的なものなので、なんかの機会があったり、ふと気に入った音に出会えば聴くこともあるだろう。
 ジャンルで言う場合は単に取り合えず便利な呼称、というぐらいだろう。ジャズなんていわばもう、ずっと昔からロックもポップスもラップもクラシックもイージーリスニングも混ぜこぜのジャンルに等しいのだ。

 武満さんのつくった歌にはシンプルで短くて谷川さんのような詩がよくあう。でも「翼」などいくつか自身で書かれたものもある。

 『彼が誰でも歌えるこのような「ソング」を残してくれたことを私は心から喜んでいます』
 『思い出や残した文章も私にとってはかけがえのないものですが、彼の書いた歌を口ずさむとき、私はもっとも身近に武満という人間を感じます。と同時に、そのむこうに流れる彼が夢見た「音の河」に、私もまた加わっているのだと思うんです』

 「死んだ男の残したものは」について、武満さんは『政治的に歌うのではなく、たとえば「愛染かつら」の歌を歌うように歌って欲しい』と言ったという。
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by past_light | 2007-05-26 21:02 | ■Column Past Light | Trackback | Comments(2)

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Commented by falanx at 2007-05-28 11:20 x
テレビで誰かが言ってたが、死の直前、武満徹はバッハのマタイ受難曲を聴いていたらしい。
不謹慎で、甘っちょろいことを書いてしまうが、僕は母親の首を切ってしまうような子供に武満徹を聴かせてみたい(どういう反応を示すか興味があるだけだ)。
人間なんて恋人同士で美味いものを食ってホテルにしけこめば癒されるものだ。
それじゃ人間の原罪って、いったい何だろう?
高校生が母親の生首を持って通りをうろつくことか。
僕は武満徹の「音の河」は風のようなものだと思っている。
風は風でも、その風は千でも万でも億でもなくて、ただの無色透明な風だ(「千の風になって」の悪口を書いているんじゃないよ)。自然にそこいらじゅうどこにでも吹いている風だ。
武満徹の音楽は、僕らの肉体の殻を吹き抜けて、僕らの原罪までやってくる。バッハのマタイ受難曲がそうであるように。
僕がよく聴くのは、「武満徹・ギター作品集成」。ビートルズの曲も入っているポピュラーなアルバムだ。武満徹という天才である大作曲家のほんの一部分。
「美は、美的なものはもう僕にとっては怨敵なんだ」
これは三島由紀夫の小説「金閣寺」の主人公のセリフ(笑)。
Commented by past_light at 2007-05-29 02:32
falanxさん、そのテレビはぼくの見た立花さんがしゃべるものでしょうか。ここでも以前コラムでも書いています。

「武満徹・ギター作品集成」のはなし、マリオ・Aというひとの新書判の本があって、語っているんですが、聴かせて、武満さん「どう、ぜんぜんちがうでしょう」と言ってましたが、どうですか。
そのうち捜して聞いてみます。

書いたものとか、映画のサントラのほうはけっこう知らず知らず馴染みがありましたが、なかなかCDなどは聴くのが遅くなりました。
音の河、谷川さんはやっぱり詩人だな。
そうそう武満さんは「お前は美にこだわり過ぎる」みたいなことをジョン・ケージだったかに言われたそうですよ。