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テレビで見る時間の進みかた

 昨夜TVのアーカイブスを観ていて、「これだな」と思ったのは時間の進み方の感覚。
 いわば展開のスピード、情報の量ではなく、ものごとをたっぷり味わいうるのは、反比例して--ゆるやかな表現のしかた--だということだった。
 スピードによって効率はあがり量も多くこなせて、情報伝達も量が増し、一見万々歳のようだが。しかし、物理的な時間と心理的に感じる時間とはまったく異質なものなのだ。

 テレビが小学生のぼくの家に来てから、まだ間もない頃に観た記憶のある「それは私です」という今で言うクイズバラエティ。30分の放送がのんびりと展開するその番組。モノクロの解像度の低い画面の中に、もうこれほどゆっくりなワイプは見たことないようなタイトルで始まり、司会の丁寧な日本語がシーンと静まり返ったような(笑)スタジオにくっきりと響く。
 セットは屋台とたいして違わないような木の板で作られた質素なものばかり。登場する素人さんも解答者のゲストも無駄口は皆無。中には曾野綾子さんや池部良さんの若い姿がある。今なら芸人だとカメラの方角からギャグを催促されている頃だろう。

 素人さんはテレビ出演はともかく今よりももっと特別な緊張感があることだろうから表情は堅く素朴だ。問われた質問に短く答える言葉も丁寧そのもの。「〜でございます」が流行っていたのか、なんて、おそまつ君のムッシュ・イヤミの記憶を彷佛とさせる。

 解答者もフィックス(固定する)的な表情がふしぎに楽しい。
 曾野綾子さんの控えめだがキラリと自己の強さが見えかくれする口調や笑顔がいい。男性陣は正解率が高くて司会に誉められようと、ブスッとしたままだ。カウリスマキが観たら喜びそうだった(笑)。

 表情豊かに見えて、それは過剰だったり、実はつくられたものばかりが垣間見え、バカ笑いの中で消費されて行くような感情表現。それとは反対の、あるいは向田邦子ドラマに登場するような人の静かな色気が、実はこの時代にはまだテレビで観られたのかとさえおもう。

 もし、テレビ制作者に破天荒な勇気があれば、全く飾り気もなくセットもCGも使わず、おかずのような演出を禁じ、テロップは出さず、出演者は必要以上に口を開かず、無理に笑わず笑わせず、淡々と誠実に過ごす三十分番組を試してみよう。この上ないゆっくりなタイトルのワイプは、唯一のテクニックで残して。

2006.3/27 NHKアーカイブス
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by past_light | 2006-03-27 15:20 | ■Column Past Light | Trackback | Comments(0)

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