賢治の言霊

 宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を、その日の幼稚園で暗記して帰って来て父親に聞かせるという娘の奇跡。
 びっくりだが、それだけではなくて、聞かせてもらっていた父が「え、何々、いまなんて言ったの」とくり返してもらったところが、

 「南ニ死ニソウナ人アレバ 行ッテコハガラナクテモイイトイヒ」。

 父親は死の宣告を病院から言い渡されて、はじめの三ヶ月のあいだ近づく死というものが怖くて仕方がなかった。
 しかし、ある日娘が覚えて来た宮沢賢治のこの詩を聴いて、すっかり怖さが抜け落ちたのだという。 怖がっている暇はない、とも思った。

 父親はできるだけたくさんの想い出を家族とつくろうと思って、日々を大事に生きているという。
 健康なときは、あるときは勝ち負けにこだわり、「ざまあみろ、オレは勝つぞ」と思い、あるときは自分が家族を守っているんだと思っていたが、妻や子どもやまわりに、なんだ助けられているんじゃないかと分かったんだと。

 テレビを観ていたら、そんなドキュメントがあって、なんだか、この家族すごいなあと思った。
 こういう人の話を聞くと、やっぱりちょっと恥ずかしくなるんだな、緊迫感ない自分が。

 それはそうと、言葉が人を救うと言うことがあるんだと改めて思う。
 しかし、幼稚園で暗記して帰った小さな娘や、奥さんの平常心、といろいろと人には奇蹟が用意されているような気がする話だ。

 言葉が、ひとの深くで伝わり作用し力を発揮する。宮沢賢治も本望だろう。


★リンク「雨ニモ負ケズ」原文

★宮沢賢治関連過去コラム「迷い人」
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Tracked from about ・ぶん at 2006-02-26 08:13
タイトル : 忘れられていない言葉
去年の12月に「とどのつまり、、」というタイトルで、宮沢賢治の詩を載せましたが、この頃聞かないな、この精神、忘れられているのではないかという不安からでした。 JUNさんに早速嬉しいコメント頂いた後も、私の記事とは関係なく独自に、この言葉を取り上げている記事をいくつか見かけ、嬉しく思いました。結構あったのですが、具体的にどちらのブログか忘れてしまいました。お心当たりのある方は、TBして頂けると有難いです。 今日、また、この詩の持つ力の凄さを伝えるPast Lightさんの記事を拝見しました...... more
Commented by bs2005 at 2006-02-26 08:16
こんにちは!この言葉が取り上げられているのが嬉しく、こちらも記事をアップしましたので、TBさせて頂きました。by ぶん
Commented by past_light at 2006-02-26 17:30
ぶんさん、こんにちは。
TB、ありがとうございます。シンクロしてますね。
こちらもうれしいです。トウキョウはちょっぴりマケソウナ雨です。(笑)
by past_light | 2006-02-26 03:07 | ■Column Past Light | Trackback(1) | Comments(2)

過去と現在、記憶のコラム。関連ありなTBはラヴリー。リンクはフリー。コメントはブラボー。


by Past Light