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「憎しみだけの人生など無意味だ ! - チャップリンの独裁者」

 チャップリンの「独裁者」は、ぼくが二十歳そこそこ、当時チャップリン・リバイバルブームがあり、ロングランで連続上映されていて、一番好きな「モダンタイムス」や、「街の灯」「殺人狂時代」「黄金狂時代」・・それらのなかの一本として観たものだった。そのころのスポークスマン的な淀川さんも、パワフルな存在だった。

 記憶に残っていることでは、第二次大戦さなか、生々しい頃作られたということと、そしてチャップリンが、「もし、ナチスがあれほどのことをしていたとわかっていたら、恐ろしくてわたしは本当にこの映画を作れたかどうか分からない。」というようなコメントを知ったことが印象的だった。

 それは今改めて観ていると、登場する役としてのチャップリンの、けして英雄的なスーパーマンのような人物像ではない、気の小さい世俗の垢もたくさん持っている小男が、どういうわけか凄いことに巻き込まれ凄いことをしてしまうという、そのいつもの展開に意味深く重なる話だなと思った。

  9.11以後の間もないころ、この世界で、この映画をしばらくぶりに観なおして、なんともリアルな映画だったのかと、おかしな言い方だが、画面に観入りながらの自分の中の反応にも驚いた。
 チャップリンが演じる独裁者の役にしても、その取り巻き参謀や、隣国の独裁者とのナンセンスながらのやりとりなども、目がさめるほどにシリアスに感じる。練りに練ったと思われる独裁者の描き方の正確さに驚き感心する。

  映画が作られた頃も、まさに世の中は暴力と悲しみの生々しい空気があっただろう。そして、今また、同じ空気があるのか。

 有名な、心をうつ最後のシーンになる長い演説。
 二十歳そこそこで観た時も、この観客に正面を向かっての、真剣で普遍的なスピーチは感動するシーンでもあったが、今聴いていると、今こそさらに世界の切実な願い、叫びとして深く胸に響いてくる。

 「わたしは皇帝などにはなりたくない。支配ではなく、助ける人でありたい」
 「憎しみだけの人生など無意味だ」
Tracked from 万歳!映画パラダイス〜京.. at 2006-05-18 14:08
タイトル : 「街の灯」オーケストラライブに感動
 最近、東京などではこうした試みが出始めているようだが、サイレント映画とオーケストラのコラボレーションというものを京都で初めて体験した。映画は喜劇王チャーリー・チャップリン(1889〜1977)の名作「街の灯」(1931)で、演奏をしたのは京都市交響楽団....... more
by past_light | 2005-07-09 22:28 | ■主に映画の話題 | Trackback(1) | Comments(0)

過去と現在、記憶のコラム。

by Past Light