「いつもの天使」

 中島らもさんのことを以前テレビで観て書いたことがあった。
 先だって、ついにという気もしたんだけど残念ながら亡くなった。
 特に読者というわけでもなく、その人に関心も深かったわけではない。ただ、このときのテレビでの彼の姿や話に、惹かれたことを思いだす。


 中島らもという作家はアル中でウツ病という経験をしている。
テレビで対話しているらもさんは、気の毒なくらい生気がない風に見える。

 アル中になるいきさつは、執筆の仕事に追われながらの日常が原因の一つだけど、彼はもともと35才までの寿命のつもりで生きてきたらしくて、それもあって「むちゃくちゃやってた」という話だから、聞いている方の感情移入もむずかしい・・。

 仕事に酒が入らないとエンジンがかからないという毎日が続けば、もうあぶないのは当人も気がつきながらも、そんな日常は止まることがない。
 酒のせいもあり鬱状態が訪れ、幻聴や幻覚が自らを死の淵へと誘おうとする。
 それでも幾たびかの危機を通り過ぎながら、入院中に側で亡くなっていく人を見れば、自分とは違って真面目に生きて来たのに、そんな運命を迎えてしまう姿がある・・。
 そんな経験を著作の中で、「なにも悪いこともしていないのに死んでいくその子に、お前の腐った20年をくれてやればいいのに・・」と、耳にすれば自虐的に聴こえることも思ったらしい。

 酒を断った一年に気がついたこと・・初めて道に咲く花を見て「感じる」ことができたと言う。
 酒浸りの日々には「 ああ、花か・・」とぼんやり思うだけだったのが、「綺麗だな・・」と感じることができたという。しかし、とはいえ今でも完全に酒から足を洗ったわけではなく、「明日までやめとこう・・」の連続の日々でしのいでいるらしい。

 印象的なのは、締め切りに追われひどく苦しんでいる夜に、窓の外から石焼き芋売りの声が聴こえてきた話だ。「おれがこんなに苦しんでるのに、♪いし~やき~いも~・・おいも~・・とはなんだ!」と思いつつも、笑ってしまったと言う。

 「人には毎日ね、ひとりの天使があらわれるんです」「それは電車のホームにいた会社員だったり、町の魚屋のおばちゃんだったりするんだよね」
(2001.9記述 2004.9加筆)
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Commented by acoyo at 2004-09-19 22:41
ここでブログやっている昔っからの男友だちが、らもさんが死んだ日に、泣きそうなメールを打ってきたました。ぼーっとして、空を見たのを覚えています。
Commented by past_light at 2004-09-20 02:23
そうですか。親愛を感じている方のお気持ちわかります。
できればあんな調子でもいいから、長生きしてみてほしかったですね。

淀川さんやフェリーニが死んだ時は、ぼくもずっと・・考えてましたね。考えた内容はたいしたことナインですが。
Commented by waku59 at 2004-09-20 20:34
とっても好きでした。

中島らも。
Commented by past_light at 2004-09-21 02:30
waku59 さん、コメントありがとうございます。
by past_light | 2004-09-19 21:15 | ■Column Past Light | Trackback | Comments(4)

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