スローライフ・イン・トーキョー(2)

 大きな犬を連れた老人が散歩していた。
 犬は飼主の老人と共に長く生きて来たのだろうラブラドールで、おとなしくやさしい目をしていた。

  雨の上がったばかりの翌日で、公園の土も草もまだすっかり湿っていて、近くを流れる川の水は土色に濁っていた。


b0019960_2105149.jpg  老人は犬とともに近くのベンチにしばらく腰掛けていた。そしてやがてまた犬と歩き始めようと湿った土の上に足を運んだ。

 だが、すぐに犬は先を急ぐのをむずがって、湿った土の上にまたも身を伏せて寝転んでしまった。
 日陰の濡れた土の上は冷たくて気持ちがいいのだろうか。

  多くの飼主の散歩を目にする。よく見る光景といえば、犬を繋いだひもをひっぱり強引に先へ進めようとするのだが、その老人は違っていた。それはちょっと意外な光景だった。
 犬をとがめる様子もなく、手に下げた紙袋からビニールを取り出し、その濡れた土の上に敷いてから犬のそばにまた老人も座ったのだった。

 そしてふたりは静かにしばらくの間そこにいた。
 夕暮れが近づいていた。
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by past_light | 2005-05-23 21:08 | ■Column Past Light | Trackback | Comments(0)

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