「近くて遠い人、遠くて近い人」

図書館に寄って少し本を見ていた。 映画監督、大林宣彦の「マヌケ先生・・」のエッセイがあったのだが、借りている本を返していないので、そこで少し拾い読みしてきた。
 めくったところに小学校時代の、ある先生の話しがあった。
 その先生は算数の先生なのに、授業の中に生徒たちと共に、映画を観に行くカリキュラムを作ってくれていたそうだ。
渡船
 ある日、学校をさぼって映画を観ていた大林少年の隣に、気づくとその先生がとがめもせず一緒に座り映画を観て笑ったりしていたそうである。
 映画館を出ても、さぼったことには、なんにも触れずに、一緒に丘の上まで散歩したりしたそうである。

 ある時、先生が「人間にはニ種類の人間がいる。近くにいても遠い人と、遠くにいても近い人だ・・、よく覚えておきなさい」と大林少年に言ったという。
 ・・・その後、ある日の学校の朝礼で、その先生が壇上に立ち、こう言った。
 「突然ですが、私は学校を辞めます。みなさんとお別れしなくてはなりません。理由は言えません。お別れする私に拍手して下さい」。
 先生は自分で拍手しはじめ、生徒たちも何故かわからないまま、拍手したそうである。

 その後、大林少年は大人になり、あの時、おそらく気づいていながらなぜか忘れていたことを思い出す。そのとき、みんなが拍手をしている時に、確かに他の先生のなかに拍手していない人たちがいた、と・・。
 その人たちは、ほんとうに、あんなに近くにいても遠い人たちだった・・と。
 そして、心に深く印象を残した、その辞めていった先生、(辞めさせられたのは明らかだが・・)は、ほんとうに今でも--遠くても近い人--だと・・。

 この話しを読んでいて、同じ経験がなくても、同じような気持ちを持ったことがあるような人は多いのではないだろうか。
 近くても・・遠い人は、結構、いつの時代でも多い。--遠くても近い人--それは、素敵な響きだ。
(1999.9・記述 20004.9修正)
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by past_light | 2004-09-07 17:54 | ■Column Past Light | Trackback | Comments(0)

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