2005年 02月 17日
「幻の光」と「ワンダフルライフ」
「誰も知らない」でついに一等賞という監督になった。しかしその映画はまだ観ていないので、感想は書けないのが残念。
「幻の光」(1995年)は江角マキコの初出演・主演ということ。
アップの少ない画面。画面のトーンも暗く、テレビの画面だから、さらに表情もよくは伺うことができない。しかし、それがマイナスかと言うと、意外にそんなこともないのだ。抽象的なドラマの雰囲気がより抽象的になって、妙に心に残ろうとでもするかの画面だ。
多くが遠目のシルエットで静かに語られるスタイル。それがこの映画では印象的に網膜に残るようだ。それは登場人物の心の中がそのまま風景になったような画面ということだ。
言葉による説明もほとんどされないので、彼らの行動の動機も想像力を要求する。しかし、想像すること、じつはそれを空しく思う。そんな心の情景を嫌と言うほど知っている人、馴染んでしまっている人にとっては、ということかもしれないが。
説明できない人の心の軌跡を描いていると思えば、ラストに近い主人公の言葉にされた「長い間の問い」も、もしかしたら必要なかったかもしれない。
音楽が、ウィンダムヒル・レーベルのものかと思ったんだけど、このへんは確かめていない。
次の「ワンダフルライフ」はセリフの多さから言えば、比較にならないほど「言葉」を聞くことができる。
しかし、この映画は映画そのものを場に借りた寓話となっていて、死後の中空の期間をドキュメンタリーのように語りはじめることから、そのアイデアにも身を乗り出してしまった。
登場する人は、役者さんも含めて、きっとほんとうにあった自分の過去を語っているように思えるような話が多い。だから思い出を語り、探り、確かめるような、その表情が、聴いているぼくらにもナチュラルに楽しいのだ。
「あなたが、いちばん幸せだった瞬間を思い出して、決めて下さい」
そうすれば、その瞬間の感情に永遠に住むことができる。
ということだから、死んだ後の世界の入り口を話にしたとはいえ、ほのぼのと春の光の中でまどろむような雰囲気だ。まるで学芸会の準備をするような感じ。
テレビ出身の監督という話だったけれど、まるで映画という媒体の特殊さに、のめり込もうと意図したかのように、つよい映画への愛情も感じられる。
ふたつの作品とも、強引に我のテーマを押しつけようとはすることなく、ドキュメンタリー的な作りを感じるのも、日本映画の中では新鮮だった。
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from BLOG IN PREP..
at 2005-02-17 20:52
タイトル : 映画「幻の光」 超越した力の存在感
正月も3日になると昼のTV番組も手抜き過ぎ。是枝監督の「幻の光」を観た。 初詣のお不動様のせいじゃないとは思うけど、この映画を観ている間、ぼくの頭の中には「縁」という言葉がずっとつきまとった。縁、因縁。映画の冒頭、主人公の女はある因縁を背負わされる...... more
正月も3日になると昼のTV番組も手抜き過ぎ。是枝監督の「幻の光」を観た。 初詣のお不動様のせいじゃないとは思うけど、この映画を観ている間、ぼくの頭の中には「縁」という言葉がずっとつきまとった。縁、因縁。映画の冒頭、主人公の女はある因縁を背負わされる...... more
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from もじもじ猫日記
at 2005-02-22 22:36
タイトル : 「ワンダフルライフ」
99年4月20日 「幻の光」でお気に入りになった是枝監督作品。 亡くなった人に 「人生の中から大切な思い出をひとつだけ選んでください」 と問いかける係員。 人々は自分の人生を振り返って、悩んだり後悔したり、 思い出に浸ったりして、ひとつの場面を選び出す。 与えられた時間は一週間。 選ばれた思い出は職員たちの手で撮影され、 最終日には上映会が開かれる。 役者に混じって一般の人々が 自分の思い出を語っているのが興味深い。 若くして亡くなった人、 人生を生ききった人、それぞれだ。 選べない、では...... more
99年4月20日 「幻の光」でお気に入りになった是枝監督作品。 亡くなった人に 「人生の中から大切な思い出をひとつだけ選んでください」 と問いかける係員。 人々は自分の人生を振り返って、悩んだり後悔したり、 思い出に浸ったりして、ひとつの場面を選び出す。 与えられた時間は一週間。 選ばれた思い出は職員たちの手で撮影され、 最終日には上映会が開かれる。 役者に混じって一般の人々が 自分の思い出を語っているのが興味深い。 若くして亡くなった人、 人生を生ききった人、それぞれだ。 選べない、では...... more
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from distan日誌
at 2005-04-06 00:55
タイトル : ワンダフルライフ
「ワンダフルライフ」と言えば、「ああ毎週見てます」「見てました」という声が返ってきそう。いいえ、これは、韓国ドラマでもなければ、反町クンと長谷キョンのフジTVドラマでもありません。是枝監督の「ワンダフルライフ」。今から、6年も前の映画なのですが、実は、その存在をこれまで知りませんでした。「誰も知らない」を観て、その斬新な手法に関心を抱き、この人が、他にどんな映画を撮っているのか知りたくて、行き当たったのがこの作品です。 「死んだ人たちが、まず集まる場所」という設定からして、思いっきりファンタジーで...... more
「ワンダフルライフ」と言えば、「ああ毎週見てます」「見てました」という声が返ってきそう。いいえ、これは、韓国ドラマでもなければ、反町クンと長谷キョンのフジTVドラマでもありません。是枝監督の「ワンダフルライフ」。今から、6年も前の映画なのですが、実は、その存在をこれまで知りませんでした。「誰も知らない」を観て、その斬新な手法に関心を抱き、この人が、他にどんな映画を撮っているのか知りたくて、行き当たったのがこの作品です。 「死んだ人たちが、まず集まる場所」という設定からして、思いっきりファンタジーで...... more
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from 逃源郷
at 2005-06-12 23:20
タイトル : ワンダフルライフ
「誰も知らない」、「ディスタンス」の自分が大好きな是枝裕和監督の長編第2作目。尚、この感想は去年の6月の自筆の日記からの抜粋なので、あしからず。 これまたいい映画にめぐり合ってしまった。こう、立て続けにいい作品並ぶと、かえって後が怖くなる。 と、ワンダフルライフ... more
「誰も知らない」、「ディスタンス」の自分が大好きな是枝裕和監督の長編第2作目。尚、この感想は去年の6月の自筆の日記からの抜粋なので、あしからず。 これまたいい映画にめぐり合ってしまった。こう、立て続けにいい作品並ぶと、かえって後が怖くなる。 と、ワンダフルライフ... more
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from mints life
at 2006-10-03 18:53
タイトル : 幻の光
宮本輝の小説を映画化した是枝裕和監督のデビュー作。 '95年のヴェネチア国際映画祭をはじめ、各国の映画祭で数々の賞を受賞した作品。 是枝監督というと「ワンダフルライフ」や「誰も知らない」の方が有名なのかもしれませんが、私はこの作品が一番好きです。 江角マキ...... more
宮本輝の小説を映画化した是枝裕和監督のデビュー作。 '95年のヴェネチア国際映画祭をはじめ、各国の映画祭で数々の賞を受賞した作品。 是枝監督というと「ワンダフルライフ」や「誰も知らない」の方が有名なのかもしれませんが、私はこの作品が一番好きです。 江角マキ...... more
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もじもじ猫
at 2005-02-22 22:39
x
TBありがとうございます。
是枝監督はTVのドキュメンタリー監督出身です。
「誰も知らない」はぜひ見ていただきたい、お勧めの作品です。
「ディスタンス」もいいですよ。
是枝監督はTVのドキュメンタリー監督出身です。
「誰も知らない」はぜひ見ていただきたい、お勧めの作品です。
「ディスタンス」もいいですよ。
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past_light at 2005-02-24 22:03
>もじもじ猫さん、
コメントとトラバありがとうございます。
>「誰も知らない」はぜひ見ていただきたい、お勧めの作品です。
>「ディスタンス」もいいですよ。
はい、どちらもまだ観ていないので楽しみにしています。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
コメントとトラバありがとうございます。
>「誰も知らない」はぜひ見ていただきたい、お勧めの作品です。
>「ディスタンス」もいいですよ。
はい、どちらもまだ観ていないので楽しみにしています。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
こんにちは。
幻の光でTBさせていただきました。
幻の光でTBさせていただきました。
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past_light at 2006-10-04 00:50
mintslifeさん、こんばんは。
TBありがとうございました。
こちらもトラバしてみましたが、うまくいかないようでした(^-^;
中野のお店ですか、割と近いところですから、いつかお顔を拝見することもあるかも知れませんね。
TBありがとうございました。
こちらもトラバしてみましたが、うまくいかないようでした(^-^;
中野のお店ですか、割と近いところですから、いつかお顔を拝見することもあるかも知れませんね。
by past_light
| 2005-02-17 20:06
| ■主に映画の話題
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