勝ち組、負け組・・2000.1から

 ニュースを観ていて、キャスターの力量と見識、それよりも増して、人間的な深さみたいなものが、すごく番組全体に影響するという感じがする。
 番組の進行には有能な能力を発揮しても、立ち止まる深さに欠けるような人も多いようだ。

 たとえばさかのぼっての2000年1月のあるニュース番組のことだ。
 これからの日本の経済、ひいてはサラリーマン社会の生き残りみたいな話がされていた。
 そしてその条件、リストラ時代の日本・・これからますますアメリカ的に移行していくだろう社会、会社のシステムの話。
 そんな「勝ち組と負け組」というキーワードが連発される特集を観ていて、なにか踏み込みの浅さのような感じが露呈している気がしたものだ。
 今にして思えば、それは流行語みたいなものだった。今でも幅を利かせているようだけれども。
 しかしその時思った。なんでもなんとか専門家ならあなたは未来予報士みたいなものなのかと・・。バカにしないでよ♪。

 ゲストのコメンテーターも含めて、そういう世の中の動向に無力な解説の言葉しか聴こえてこない。
 「そんな社会を肯定するというわけでは無いが、否定しきれない」ということは一見、当り前のようだ。
 が、実力本位、アメリカのような勝ち負けの「アメリカンドリーム」の神話を美化し、また過大に経済的な上下をつくるのは、その貧富の差から生まれる危険な人間関係図、精神的な対立、それは社会全体の健康にとって、けっこう危険で軽視できないような感じがしたものだ。

 日本に以前、中流意識などという言葉があり、現在もまだそういう真ん中の経済状態の人が多い感じらしい ( 2005年の今はさらにだいぶ状況も違うだろう。アメリカなどでは中流・・と思われた位置の人々に、食事配給の列に並ぶ人が増えているという話がニュースにあった。今、日本も同じ方向へ動いていないだろうか ) 。

 その番組の話では、アメリカなどはピラミッド形というか、勝ち組の一、二割が非常なお金持ち、残りのなかの四割ぐらいは数字にすると年収で200万以下ぐらいの、ちょっと苦しい生活の人が多いという。
 つまりそのお金持ちというのは、以前読んだ中村哲さんの言葉にある「彼らは日本の小金持ちが吃驚するぐらいの財産を持っています」というアメリカ人がいるわけですね。風邪薬をもらいに飛行機で出かけるような。


 個人の能力、スキルというのは、その様々な職業的カテゴリーのなかでは価値を発揮して、個人を勝ち組に導くものだろう。でも、他の分野では負けることもあるというのがあたりまえの真実の姿なのだが、ややもすると自分の世界で勝つことが、すべてに勝っているようなイリュージョンに落ち入りやすいかもしれない。
 現代の社会の表面上、適応した能力のあるものだけが当然のごとく良い暮しをし、豊かな物質的生活を持つのが当り前だという価値観。
 そんな社会の常識のようなものが永遠に続くと思うだろうか。それに、それは健康的な社会、世界なのかはかなり疑問だ。
 まあ、死は誰にも平等に訪れるのではあるが・・。

 会社では有能でも、家事、料理は家庭のベテラン主婦に適わないだろう。
 一人の子供の屈託ない笑顔の与えるその場の空気と、数億のお金を動かし利益をあげる男と(例えばの話だ)、誰も、それを「能力」として同列に比較を試みるなんて馬鹿なことは考えないだろうが。
 しかし、いや気持ちの中でなんとなく思っていないだろうか、そこに優劣、価値を勝手に与えていないのか。そんなことを自らの心に問いかけたことがあるだろうか。

 じゃあ、どんな社会ならいいというの? と聞かれても、もちろん明確に答えるわけにはいかない。なぜなら誰も、人の野心・野望や、アメリカンドリームを否定したり干渉はできないからだ。ただ、競争万歳、弱肉強食OK、そういう無慈悲な世界がぼくら人間の奥底からの本心なのか、胸に手を当てて考えてみたくないか。・・ないならいいが。

 番組の中では「勝ち組だから、幸せということではなく、負け組とは言っても、それは経済的な基準であって、幸せという基準ではない。個人の幸せ観は別物である・・」という、誰を慰めるのか、というようなコメントもあった。
 が、人は「勝ち負け」という言葉から・・「負けたくない」とパブロフの条件付けのように反応しやすいのは多くの人の現実かもしれない。
 そんな人の沢山が住む社会が、住みやすく、くつろげる世界かどうか想像力を働かせてみるのも悪くないのだが。

 「勝ち組、負け組」、そんなキーワードに時代も流され続けて幾年月。
(2000.1のノートを修正加筆)
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by past_light | 2005-01-12 22:13 | ■Column Past Light | Trackback(1) | Comments(0)

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