2004年 11月 18日
「恥ずかしさ」
それはそうと、ぼくはけっこうシャイな中・高校生だった(笑)。
きっかけは、突然家の事情で、ぼくにとって見れば閉鎖的な街へと、はじめて引っ越さなくてはならなかったという思春期の経過もあるだろうか。
しかし、もともと性格的に開放的であれば、どこへ行こうが人気者になるヤツだっているだろうから、シャイなんてへのような言葉に思えるんだが・・。
ぼくのその頃は、いったん押された「内気」っていう烙印は、もう偏見の対象そのものだったような気がする。それにその「内気」という言葉そのものが恥ずかしいような響きだった。それは大げさに言えばすでに「負け犬」のようなものだったのだろう。逆に言えば、明るく、屈託なく、臆面なく、快活であるということは、いわば勝者の条件であるようなものだ。
とくに田舎なんかだと、そのいったん押された烙印のイメージの殻を破るのは大変かも知れない。
あなたが卒業して、しばらく会わない友人に突然再会して、彼や彼女が当時となんだか豹変して見えたら、あなたの偏見と、彼や彼女のその頃の苦痛をわかってあげてほしい。(笑)
ところで、ほとんど恥ずかしいって状態は、自意識と関係しているという気がするが、つまり自意識過剰ぎみ・・という。これはいったんあるシュチュエーションなり、タイミングなり、まあハマると沼のように足を捕られるものだ。赤面症などはそういうことなのだろうか。まあ逆に厚顔無恥、どこでも土足侵入、というような図々しいというタイプというのもいないこともないだろうが。ほどほどがいいってことだろうか。
「恥ずかしさ」について、クリシュナムルティという人が語った話があって、それをぼくはとても興味深く読んだ。
彼はインド生まれの、なんというか・・思想家ではないし、宗教家というわけでもなく、哲学者というわけでもなく、その時代、現代の仏陀と言われたような、精神的な教師としてインドや西洋の各国にスピーチして回っていた人だ。日本でも沢山の本が出版されているが、西洋におけるほどは有名ではないだろう。
スピーチの要旨を分かりやすく言うと、「気づき」「あるがまま」の「意識」について語り続けた人。まあ、そんな言葉で簡単に言えると便利なのですが。要は実体・・ってことです(笑)。
1986年の死後の今も、アメリカのオハイとか、インドのリシバレーとか、ヨーロッパなどにも、子供たちのための正式なスクールも存在し続けている。
以下に紹介したのは、インドにあるスクールでの子供たちとのスピーチ、やりとりを本にしたもので、「ぼくたちは、なぜけんかするのでしょう」とか「なぜ私たちは、友だちが欲しいのでしょう」とか、子供たちの多くの率直な質問が楽しいものだ。
しかも、くつろぎ真摯に応えるクリシュナムルティの言葉は、大人との対話と比較しても、まったく質的な差がないのが驚かされる。
そのなかから、ぼくが初めて読んだときから印象的で、よく思い出す質疑応答のひとつがある。
ぼくは「恥ずかしいとき」、今ぼくはどうだろう・・とよく思う。ほとんど恥ずかしいですね(笑)。
Q. 恥ずかしさとは何でしょう。
君は知らない人に会う時、恥ずかしくはないですか。この質問をした時、恥ずかしくはなかったですか。
もしも私のようにこの台に座って、ここで話をしなくてはならなかったなら、恥ずかしくはないでしょうか。
美しい樹や優美な花、巣に止まっている鳥にふいに出会うとき、恥ずかしくはないですか。ちょっとぎこちなくなって、立ちつくしたくならないですか。
恥ずかしがるのは良いでしょう。 しかし、私たちのほとんどにとって恥ずかしさは自意識を意味しています。
そんな人物がいるとして、えらい人に会うときには、自分を意識してしまいます。
「なんて彼は偉大なんだろう。こんなにも有名だ。しかし、私は何でもない」と考えます。
それで恥ずかしくなりますが、それは自分を意識しているということなのです。
しかし、異なる恥ずかしさがあって、それは本当は優しいということなのです。それは自意識ではありません。
「子供たちとの対話」平河出版 ( J. クリシュナムルティ / 藤仲孝司・訳 )
・・「美しい樹や優美な花、巣に止まっている鳥にふいに出会うとき、恥ずかしくはないですか。ちょっとぎこちなくなって、立ちつくしたくならないですか。」
ときにそこから詩や俳句もうまれることもあるだろう。しかしそこは、感受性とか芸術とか言う以前に、人としてのたいせつだがまた喪失しやすい、イノセントでシンプルで美しい、精神のふるさと・・を感じさせる。
あなたが「ブラザーサン・シスタームーン」という映画を御存じだとしたら、それは熱病から醒めたフランチェスコが、屋根に登って鳥に出会うシーンをも思いださせるかも知れない。
by past_light
| 2004-11-18 14:35
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