ブログトップ
それでもボクはやってない
 周防正行監督という人は、すごくプロな人だなあと思った。
 この映画は前作の『Shall we ダンス?』の娯楽性極地から方向転換、と思われながら、いやいやもっと賛辞すべき完成度。
 観客をスクリーンに引きずり込む力のある娯楽性、それをまったく犠牲にしていないつくりで、この監督の映画の話法はたいしたもの。

 観終ると、のちのち、登場した人物たちの印象的なシーンが眼に焼き付いているのに気づく。
 ほんの短い映像だが、ぜったいに見逃しては勿体無い、そういう各役者たちの、演出時におけるその場での、完璧に計算されたような表情の、ある捜された角度で映されたシーンが網膜に残っている。
 いくつものシーンを、ぼくは明け方、夢うつつに思い出しながら、目蓋に上映して反芻してしまった。
b0019960_185986.jpg
 法廷内に集中する後半、冷徹に、無表情に書類に目を通す裁判官が映されるカットと、その表情を計りかねる弁護士の表情など、まさに完璧。
 そのシーン、裁判官の眼鏡の奥にある眼の表情が伺えない。
 役にある裁判官の演技を映すそのカメラからの角度たるや、弁護士から見る裁判官の角度なのだが、監督は最上の構図を掴まえている。

 そういうシーンはいくつもあるのだが、周防正行監督 という人は演出家として、職人的な意味でも相当実力のある人だ。

 監督は、ニュースにあった「痴漢冤罪事件」の裁判への、自らの関心の発端から、長い時間をかけての取材と裁判傍聴などの体験となどを材料に、練りに練ったリアルなドラマにした。しかしときおり脇役に存在する人たちの、それもリアルがゆえにユーモラスに映るようなエピソードが、ちよっと息抜きをさせてくれる。

 だが、日本の刑事裁判への監督が込めた思いは、ハピ−エンドにしない現実性をどうしても選ばねばならなかった。
 そういう意味では、後味の良い娯楽性ではないが、多くの観客は、はらはらし、希望し、がく然とし、落胆し、と主人公の行く末をともに案じながら、まったく疎いといわざるをえない刑事裁判における現場にある世界に目を開かされる。

 「3年間かけてシナリオを書きましたが、この内容は全部僕が驚いたことで、そういうことだけをリアルに積み重ねただけなんです。」という監督の驚きはぼくら観客の驚きになった。

 昨夜テレビで放映されたので、お茶の間でたくさんの人が観ただろう。
 茶の間で、お父さんはお母さんに「あんた、若い子のそばに乗っちゃダメよ !」と必ず言われそうだ。明日の電車内は、けんけんがくがく化・・。(笑) いやいや男にとっちゃ笑い事じゃないものな・・・。

この記事がオススメ
[PR]
by past_light | 2008-03-02 20:41 | ■主に映画の話題 | Trackback | Comments(2)
トラックバックURL : http://past.exblog.jp/tb/8116298
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented at 2008-03-05 12:30 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by past_light at 2008-03-05 13:25
ブログ、休止されたのは残念ですが、またそのうち復活されることを願っています。
記事はぼくぐらい、スローペースで厚かましく考えた方がだらだらと続けられます(笑)。
もう、アクセスも読者の応答も(笑)気にしない境地にぼくも行きたいと思います。そんなワタシですが、今後ともよろしく。
お気軽にコメントお願いします。