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忘却の彼方

 「エンデと語る」で、もうひとつ。
 本は図書館に返してしまったので、正確ではない。
 人間の脳の能力として、「記憶」は有名だけど、「忘れる」という機能について、話していた。
 「忘れると」いうのは、エンデにとっても意味を持ったことらしい。
 彼によると、忘れるものはどこへ行くかというと、より深い潜在意識の領域、無意識の底へ沈殿して行くようなものだという。変容してこそ、意味がある。
 彼にとっては、それが「人格」を形成すると思われるという。
 それが折に触れ、まあ熟成するとでもいうか、変容し、彼の仕事、ファンタジーの創作の中に重要な現れ方をしている。

 ファンタジーという言葉は、ややもすれば日本ではおこちゃま用のジャンルだと思われている向きもあるが、エンデの創作物に限らず、小栗康平さんの映画「埋もれ木」でも使われる「ファンタジー」を思い出せば、いかに人がその意識の深みへ接触できるかを問われる世界だと思う。

 読者の感想や解釈に、「必ずしも、間違っているとは言えない」という態度でエンデが答えるのは、読者の発見した、また過去の歴史や神話との類似性、共時性、それがエンデにとっては偶然であり、何の因果関係もない場合でも、それを「関係ない」と簡単に言えない、意味のある一致だということでもあるのだろう。

 意味は忘れてしまったが、「はてしない物語」に出てくるメダル「アウリン」だったか、また「モモ」という名前や登場する「亀」にしても、不思議な一致を見せているようだ。・・それの詳細は本文におまかせです。

 というか・・、話は、「忘れる」という能力?についてだけど、ぼくも人の名前は忘れるし、読んだ本の内容も忘れるけれど、モモクリ三年カキ八念し、いつかなりさがるのか。
 いや、それよりも、「忘れられる」という機能にも光を当てるような有難い話がもっと聞きたい。
Commented by falanx at 2008-03-02 01:04 x
「忘れるものはどこへ行くかというと、より深い潜在意識の領域、無意識の底へ沈殿して行く」
いい言葉だなと慰められる想いがしました。

それどころか、僕の人生で起きたことで、くず箱行きのゴミのように価値なく忘却されたことも、「潜在意識の領域、無意識の底」よりもさらに深い万物の根源まで還っていって欲しいと、そんなことも考えました。

ちょっとブルーかもしれない(笑)。
「忘れられる」存在になってしまうのは寂しいことなんだろうか?

とんでもない!
僕にとって重要なのは僕の記憶だけであって、他人にすがるなと自分を叱る(笑)。
確かに「『忘れられる』という機能にも光を当てるような有難い話がもっと聞きたい。」
Commented by past_light at 2008-03-02 20:48
falanxさん、こんばんは。
いい言葉だなあ、、、とぼくが誉められているような気になりました(笑)。

万物の根源からそもそも生まれたものだから、そこに還るのは順当なことでしょうか。

しかし、「忘れられる」存在、ということでは、多くの人類の運命でしょうか。
「おれを忘れてくれ」と贅沢な台詞も言えないまま・・(笑)。
by past_light | 2008-03-01 02:04 | ■コラム-Past Light | Trackback | Comments(2)

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