ウディ・アレンの「世界中がアイ・ラブ・ユー」

 時々、とってもウディ・アレンの映画が観たくなる。ぼくは、そんな病を抱えている。
 そうは言っても、ずいぶんただでさえ御無沙汰しがちな映画観賞だから、彼の映画だからといって新作を待ち望んだかのように映画館に足を運ぶというわけではない。ウディ・アレンの映画はほとんどがビデオというのが実体なのだけど。
  それでも映画館で観た記憶する映画に「カメレオンマン」があり、フェリーニの「女の都」とカップリングの、ぼくにとってはまったく涎ものの粋な組み合わせだった。
「カメレオンマン」は、彼の映画でも映画館で観た時はアイデアに感心しながら笑いこけた。でも後になってビデオで再見したらあんまり乗れなかったのが不思議だった。
 その三鷹にあった映画館も今は影もかたちもなくなったが、そのころはビデオがまだまだ一晩レンタルするだけで1,000円も取られた時代だった。

  このところ続けて溜まっているビデオを何本か観た。 取りあえずは禁断症状のウディ・アレンと思い、気になっていた「重罪と軽罪」を観はじめたら、どうもどこかに記憶があるシーンが出てくる。それでも結局最後まで観てしまったが、やはり前に観ていたことを忘れていたのだ(^-^;。
  ウディの映画はストーリーを覚えていないことが多い。他の映画でこんな経験はない方なので、彼の映画には、なにかそんな妙な独自性があるということにしておきたい(笑)。
 ニューヨークが舞台になることが多い彼の映画だ。残念ながらあの事件以後、今では「マンハッタン」などの名作を観るのは、当の彼に限らず複雑な思いがするだろうけれど・・。
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 ウディ・アレンの映画には微妙な当たり外れがある。微妙というのは、大きく失望するということがない程度の外れもあるということなのだが。
 同じニューヨークが舞台であれ、別れたカミさんといい友だち関係だったりするのであれ、その旦那がまた人のいい世話好きだったりしちゃってね。
 吃りがちに早口で喋る、大人になった悲観論者のチャリー・ブラウンみたいなのに、けっこう女にもてないというわけでもなくて、実は病気みたいにいい歳をして(あえて常識人ぶるとね)美貌の女性に恋ばかりしては短い蜜月でかならず振られたり。
 インテリらしい友人関係、きまって精神分析好きの彼ら、それから恵まれたニューヨーカーの中流階級の生活。意地悪に言えば自己満足にどっぷりな世界・・。どれも似たような設定に見えるものが多い。

 少しづつ温かだったり冷たかったり、深刻だったり、軽薄だったり、淋しかったり、空しかったり、病んでたり・・。
 無神論なのか神を信じたいのか、民主党支持なのか共和党支持なのか(ちょっと冗談だが・・笑) まあとにかくはっきりしないし、なまぬるいっちゃあなまぬるい。これが「煮え切らなくて、いけないよ、ゆるせない」という人はいるだろう。でも時に気付く人には、そこに強烈な皮肉も透けて見える。
 ベルイマンとフェリーニが好きだということがはっきり分かるのも、どこか滑稽なほどなんだけど、それでも現代のアメリカ、ニューヨークという街や人がよくも悪くも身近に感じられる。
 そんな空気がフィルムから満喫できるウディならではの映画づくり。

  それからそれには、会話の機関銃を浴びるみたいに字幕を追わなくちゃならないのも、ほどいい苦痛が快感に変わりそうなほど。
 フランスのエリック・ロメールなんかも会話を追うのがけっこうたいへんだが、ロメールもウディも別に哲学的な言葉が出てきたって、たいしていちいち意味を分かる必要なんかないのは一目瞭然。喋っている時のパリジャンやニューヨーカーの表情とか関係が面白いのだけれど、ウディ・アレンの映画は、万年メランコリーな顔とひとりごとみたいな口調で、吃りながらまくしたてる彼の出演シーンが、ぼくには特に楽しい。彼自身が登場しない監督だけの映画はぼくはやや敬遠するほどだ。
 シュワちゃんよりもウディを、きっとぼくはアメリカのともだちにするだろう。
 「世界中がアイ・ラブ・ユー」は、そんないつものウディが、アメリカ名物、古典的スタイルミュージカルを、クリーミーに美味しく、そしてコミカルにセッションさせた、アイ・ラブ・ユーな映画だ。(2002.3.8)
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by past_light | 2004-10-27 21:33 | ■主に映画の話題 | Trackback | Comments(0)

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