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経済飼い?

 ニュースで知ることでしかなくて、もはや実際の風景すらも、夜に出歩くことのほとんどない今のぼくには、テレビに映る光景がリアルなのかどうかわからなくてどうしようもないが、アパートも借りれずに深夜営業する店でうっぷして仮眠している、派遣でクイつなぐ人たちの疲労感はけっこう深刻だろうと思う。

 藤原新也さんのコラムを読んでいたら、そんなひとたちの声もあり、あのコイズミ改革から数年の今に至っての、景気上昇という人たちの陰に隠れていたようで、どんどんじわじわ浮き出てきた風景とは、たぶん仕事のことだけでなくて、いろいろ人間の心に深刻なダメージを与えていることだろうと思う。
 今日のニュースでも派遣会社のひとつが一月ほど謹慎させられるというニュースもあった。
 現場の労働力をになう人への賃金はむしろ十年前よりも下がっているのだから、それで景気上昇などと言っているのはなんだか恥ずかしいんじゃないだろうか。
 選挙が終って「経済界」からの声なんていうのがよく紹介されていて、結果、改革が鈍っては困る、景気に影響しては・・、なんて言っているのがとても恥ずかしいと思う。どうして経済界の人が特権みたいに、そんなことを記事に書いてもらえるんだろうねぇ。

 もう三十年以上前だけど、その頃アルバイトで朝早く行って、日雇いで順番に登録して、その日の仕事先が決まると言うものがあった。
 それで仕事先に電車で行く、またはトラックで運ばれていく、何の仕事が待っているかは、行って初めて知るその日のお仕事。
 今日のニュースの、禁じられているのに派遣されていた先というような、港での積荷を降ろすクレーンのでかいカゴを扱う仕事なんてものもやったことがあった。
 簡単に説明を受け、数人の内、他の連中はビルの上階から積荷をカゴに入れる仕事でぼくと別れた。
 ぼくは下、冬のフキッさらしの港のコンクリートの上に立ち、やがて降りてくるでかいカゴの落下点の位置を、ぼくの細い両腕で全力で掴まえて、ペンキでしるされた指定の線の中へと収めるわけだ。

 何がいちばんたいへんかと言うと、眠くなることだ(笑)。
 積荷が降りたあと、荷がトラックへ運ばれ、空になったカゴがまた上がっていく。次に降りてくるまで数十分は待つわけだ。それで、どうしてもぼーっとしてしうまことが何度かあり、「ドン!」と落とされたカゴではっとして、慌てるんだけど、上の人がクレーンをちょっと上げてくれるのを申し訳なく待たなくてはならない。やっと上げてくれて位置を直す。それが何度か重なると上の人も怒っているわけで、なかなか上げてくれなかったりする。
 あたりが暗くなり、その日の仕事が終る頃には身体は冷えきっていて、熱いコーヒーのうまさはひときわだ。

 それで、今日のニュースを観て思うのは、むかしから確かに一日仕事でそんな危ない仕事があり、ヘルメットすら何の防備もつけず、一つ間違えはカゴの下敷きになっていたかもしれないような仕事、派遣があったということ。どうしてそのころは問題にならなかったんだろうね。
 そういう意味では今の時代はどんどん表ざたにしてもくれるから、転がす資本もなくて、日々寝食の糧に乏しい生活者に、景気のいい経済界かどうかはべつにして、立派な大人なら本気で気を配ってほしいものだ。

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↓ブログで見ていたら、こういう記事があった。上記したぼくの経験した日雇いは、小さな個人事務所みたいな感じだったが、現代日本では異様に規模が大きいのはなぜか、「奴隷制度」と藤原さんも書いていたが、下記の事実がホントウならそのとおりだろう。

欧米の常識 vs 日本の非常識
1)派遣労働者が受け取る賃金は必ず正規以上と法定 vs 正規の半分以下
2)派遣労働が2年超だと直接雇用義務 vs 期限撤廃して無期限派遣
3)派遣のピンハネ率は10%未満と法定 vs ピンハネ率は自由、平均40%以上
4)企業が支払う総額はガラス張り vs けっして派遣労働者に教えないブラックボックス
5)派遣労働者の巨大全国組合がある vs 何も無い
6)派遣労働は事業拡大時などにのみ使うと法定 vs 正社員をクビにしてどんどん派遣に置き換えてよい
http://readio.info/copipe/1176433939.html
Commented by ふぁらんくす at 2007-08-05 15:37 x
僕は若い頃に地域の公共職業安定所、いわゆる職安によく通いました。
ひどい場所だった。窓口業務の担当者に泣かされました。僕は障害というほどではないのですが、すこし耳が聴こえにくくて、担当者が名前を呼ぶ声が聴こえないのです(マイクで名前を呼ぶ設備もなかった)。
担当者の小さな声、不親切で横柄な態度。いまでも思い出してしまう(笑)。

「職安とは失業者に失業手当を交付するだけの場所で、失業者に対して親身になって職を探してやるなんて気持ちのまったく感じられない場所。リクルート事件の責任の一端は、職安が機能していなかったことにもある」
当時の新聞に載ったある読者の投稿です。

リクルートの昔から、国の機関(職安)さえしっかりしていれば、いまのように民間の人材派遣会社に好き勝手をされることはなかったと思う。
しかし、そう書きながらも、僕は本心では、いまもし職を探すとしたら、やっぱり民間の人材派遣会社の方を頼りにするだろうなと考えてしまう。
いまの若者たちも、実際のところ、ハロー・ワークが当てにならないから、人材派遣会社で派遣労働者として働かざるを得ない側面はあると思う。国の責任は大きい。
Commented by past_light at 2007-08-06 02:27
ふぁらんくすさん、このところそちらも暑いですか?

そういえば、ですが、東京などだと、ちょうどぼくが二十歳前頃でしょうか、アルバイトニュースなどの求人雑誌が発行され始めたのは、はっきりはしないですが。それ以前だともっぱら新聞の広告欄ですね。
それでも当時の雑誌は薄くて、一日で捜し終えるほどでしたが。

派遣というシステムそのものというより、そういうシステムを扱う人間の心、品位、とか欲とか無慈悲とか・・つまり社会というものに生息する人間といういまだ精神は原始に生きる動物のもたらしている狭量なる現象だということですね。
だから奴隷制度とどれほど違わないかというのは、もっぱら内面に聞かないと誰も見えないわけだ。見なけりゃ自分の正体もわからないで生きていける。しかし誰しも極楽か地獄かどうかわからないけれど、平等には近づく。しかし南北戦争みたいなものはこわくないだろうか。
by past_light | 2007-08-04 03:02 | ■コラム-Past Light | Trackback | Comments(2)

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