オール・アバウト・マイ・マザー

 ペドロ・アルモドバルという、舌を噛みそうで覚えられないスペインの映画監督の作品。
 ちょっとだけ噂は以前から聞いてはいたが、どういう作風なのかは想像できなかった。でもでもなるほど、ファンがいる理由はよくわかった。
 結論から言うと、とてもおもしろかった。アルモドバルさん、あなたは素敵だ。
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 女性が主人公で、けっこう男より逞しく感じるというのは、アクションなどではありがちだが、これは女性でしかあらわせない逞しさではないかと思う。
 しかも、程度の悪いアクションなどよりはるかに展開がスリリング。その映像の密度ありつつも軽妙なセンスとで、ワクワクさせる進行だから、扱われている「命」のテーマについて完全に煮詰めて理解されなくても充分楽しめるだろう。

 子供に対する愛情、と言葉にすれば陳腐だが、それはこの映画では男どもが想像し得ないくらいに深く、それは支配ではなく受容である、という真理に到達している。
 いわゆる、差別用語かもしれないと心配するのがばかばかしいが、「おかま」さんの深淵を垣間見せてもらえたような、これは同胞人間に対する「親愛」の薫り満ちて、気持ちのよい鑑賞だった。その役者さんがまた素晴らしいから説得力がある。
 ああ、かれらは「よろこばせたい、よろこんでほしい」のだと。

 世界は戦争や暴力の場面では「おとこ」ばかりが圧倒的に支配的だ。
 なんとなくも、おすぎが、「おとこ」「おんな」と発音するのかのごとくが腑に落ちた気がする。


 アルモドバルは、「生きることは、悲しみと喜び、そして受け入れてこその親愛により、こんなにもうつくしくなる」と男達に教えたいかのようだ。
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Commented by さすらい at 2007-05-24 00:26 x
この映画は全く知りませんでした。スペインの映画だということで興味を引かれました。テレビでやったのでしょうか。エリセ監督の作品はでてきませんね。
Commented by past_light at 2007-05-24 03:09
とてもユニークな作風とテーマ性を持った人です。
けっこう以前から名前だけは知っていたのですが、なかなか観る機会がなかったです。これはだいぶ前にBSで放送していました。
この映画はアカデミー外国映画賞あたりを取っているようなので、アメリカでもうけたんでしょう。
初期の頃の映画のタイトルは「ばちあたり修道院の・・なんとか」なんて、そうとう先入観抱きそうな挑戦的タイトルがあるようです。(笑)
Commented by past_light at 2007-05-24 03:20
そうそう・・さすらいさん、この映画にはエリセ監督の「ミツバチの・・」のアナを思い出させるスペイン顔のぺネロぺ・クルスという女優が出ていますよ。人気あるらしいです。
Commented by さすらい at 2007-05-24 04:11 x
比較的最近の監督なんでしょうか。私は知りませんでした。
ぺネロぺ・クルスはけっこうフアンが多い有名女優だったような気がします。アナの面影がありますか。
Commented by past_light at 2007-05-24 21:28
アナ・トレントを思わせる顔だちです。
アナは大人になってからのものは観られませんが、「エル・ニド」でしたか、あれは少女と大人の女性との曖昧な領域の魅力がありましたね。
Commented by さすらい at 2007-05-24 23:47 x
そうそう、「エル・ニド」でしたね。少女から大人の世界をかいま見せてくれているところがありました。完全に成人してからの映画はみていないので、想像するしかありませんが。
Commented by past_light at 2007-05-25 02:09
アナ・トレントって、実はそのまま女優になるとは、想像できませんでした。
最初のイメージが強いというのは、幸福か不幸か、まつたく複雑なことなんですよね。
Commented by さすらい at 2007-05-25 20:52 x
ほとんどのファンにとって、アナ・トレントは、最初のイメージのままでしょう。成人してからのアナの映画は、国内では見られるのでしょうかね。
映画の作品名もわかりません。
Commented by past_light at 2007-05-26 01:15
前に検索したら、大人のなってのアナの映画もあるようですが、日本で観るのはできないようですね。
「ミツバチ・・」のアナは女優以前の監督の意図と力による無意識が現れた奇跡のような映画ですから。
これを超えろと言うのは、原田知世に表向き「へた」と言う人が多い「時をかける少女」のすばらしい少女像を超えろと言うのと近いかな、とも考えます。
Commented by さすらい at 2007-05-26 03:03 x
「ミツバチ・・」のアナは、自然なままのアナの存在感とエリセ監督とが出会ったという点で、おっしゃるように「奇跡のような」作品です。「エル・ニド」も、そんなアナの存在感が出ていました。大人になって、女優としてのアナの映画を見るのはちょっと怖い気がします。アナがアナのままでいてくれるかどうか。
Commented by past_light at 2007-05-26 21:08
ソイ・アナ・・という言葉がとても耳に残ります。
私はアナ、たとえおばあちゃんになっても愛してね。(笑)
by past_light | 2007-05-23 20:03 | ■主に映画の話題 | Trackback | Comments(11)

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