オールドフレンド

 ポピュラーアルバムがLPと呼ばれる30cmのレコードであり、アルバムとはシングルの寄せ集め、あるいは、せいぜい季節にちなんだ曲の集合でつくられるということが常識的だった頃、・・もちろん今では当たり前になったことだが、ビートルズとか、サイモン&ガーファンクルとか、彼らのアルバムは、どんどんと一枚におけるアルバムコンセプトを大事にされ緻密な構成でつくられはじめたものだった。

 例えば、「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」などは、それが際立っていたものの一つだが、一方、サインモン&ガーファンクルの「ブック・エンド」というアルバムでは、老人ホームの老人たちの肉声、なんともいえない、老人の溜息までが記録されてあり、ときにそれが曲の間を繋いだりした。じつに今でもそれはかなり個性的なアルバムだと思う。
 そのアルバムの一曲の、タイトルになる「ブックエンド」という歌の歌詞には、「70才になるなんて信じられない」というような言葉がある。

wave そして、その歌い手であるサインモン&ガーファンクルのふたりも、今ではすでに60才を過ぎ、その歌詞にある年齢にどんどんと近づく。そういう時の流れは誰しもに当たり前のことで、べつだん話題にするのもおかしいが、ともあれこちらも多感な時期からレコードを聴き、長年ずっと共に生きて来たような、他にはあまり存在しないぼくには親近感があるふたりだ。

 先日、「Old Friends Live On Stage」というコンサートの模様をおさめたDVD付きの輸入アルバムを久し振りにアマゾンで買い、パソコンで彼らのライブ・コンサートを観た。彼らが再結成コンサートをセントラルパークで開いてからたぶん20年ほどは経っている。それ以来のコンサートだ。セントラルパークでの成功の直後、彼らは日本でもコンサートを開き、それはドームになる前の後楽園球場。ぼくもめったに行かないコンサートに出かけて、金網越しに彼らの豆粒みたいな姿を観た。

 それから、彼らもこちらも20年を経過して、その彼らの歌う映像をこうして観ていると、「オールドフレンド」にまさに再会しているようなもので、それは胸を、熱くというか塞ぐというか、始終そんな込み上げるものがあると告白しても恥ずかしくはないことだろう。涙を流す、というようなセンチメンタルなものではなくてもである。

 ガーファンクルのあの高く透き通っていた声は、だいぶかすれがちで、伸びやかさは衰えた。だがそれは逆に言うと、以前を知る者にはそれも胸を熱くさせるもののひとつだ。しかし、そのかすれてはいようとも、彼の発声の誠実さなどは、歌うことを天職と感じているものだけが持てる、あらわせるものでもある。
 彼がソロになってからのアルバムは、その類い稀な声と歌唱の魅力が存分に発揮されたものがやはり絶頂期で、たぶんそれは最初のソロアルバムだろう。
 ポールはソロになってからのアルバムも相当に高い評価を受けるものが多く、未だに彼のアルバムごとの楽曲の新鮮な創造性は健在だ。
 サイモン&ガーファンクルとしても、楽曲の創造はポール・サイモンがイニシアチブを握っていたし、それはごく自然なことだった。が、サイモン&ガーファンクルとしてのデュオでしか味わえない曲、歌は広く長く聴かれ続けている。それはデュオで歌う魅力を当の彼ら自身もよくよくわかっていることだろう。それから時代も切り離せないし、アメリカという国とも切り離せない、深い因縁、宿命のようなものである。

 彼らの音楽は、10代から聴き続けた日本人であるぼくには、実際上は不確かなはずのアメリカのある一面の顔の印象、あるいはニューヨークに暮らす生活がさえ疑似体験したかのように、どこか身体に余韻が残るものだ。ふたりの歌声が、アメリカのある意味で健全な内省的な面を代表しているとさえ感じられてもいた。

 「Old Friends Live On Stage」に映るリラックスしライブを楽しむふたりの姿を、当のアメリカの観客も満足し共有していることが伝わる。それがまず素晴らしく、そしてサポートするバックミュージシャンの上質な演奏、開放的なアイデア、アレンジが楽しい。それからなんといっても、これぞアットホームという空気だと感じさせる、その全体の時間がライブ・コンサートというものの魅力なのだと再確認させるものだ。

 収録された若き頃の、永遠の少年のような顔だちの二人のスタジオ、ライブの様子もあるので、これはぼくのようなオールドフレンドにはいたでり尽くせリというものである。

Old Friends Live On Stage       Simon & Garfunkel
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Commented by akarma at 2007-03-14 17:10 x
時代と共にある音楽ですか・・・。
私もレコードを集めています。
やはり過去の音源なんかを買うと、面白いものや好いものは多数あるのですが、空気は存在しないんですね。(自身の内面にしか)
中古レコードなんか買うと、前の持ち主はなぜ手放したんだろう?とか思いますし。
音源という形のあるものは、どうも様々な感情が入り組むようですね。
Commented by past_light at 2007-03-15 01:11
akarmaさん、こんばんは。
レコード、ぼくはもうすでにプレーヤーが壊れて以来、随分と処分してしまいました。後々公開しているものもありますね、やはり。
痛んで聴く機会も少ないものも多かったですが、それでもときどきの記念写真みたいな感情が刻まれていたりするわけかなあと思いますね。
むかし田舎に帰ったときに中学生の時に買ったレコードが残ったものにありますが、聴くことはないのですが、すごい存在感で押し入れにあります(笑)。
by past_light | 2007-03-14 02:09 | ■Column Past Light | Trackback | Comments(2)

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