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「旅の映画と70年代」
 芭蕉という人は旅に明け暮れていたのだと思うけど、長く旅を続けると、一般的な旅と云う感覚とは違った情感が感じられたりする。それは「心の旅」というニュアンスに近くなってしまう旅人の姿だろう。

 そんな・・彷徨うような旅。

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 高橋竹山という津軽三味線の名人が居た。何年か前に亡くなった方だ。
 新藤兼人という監督が「竹山ひとり旅」(1977年)(この映画が好きでテレビでやると何度でも観た) という映画を撮った頃、そんな彷徨うような旅の映画がよくあった。
 篠田正浩監督が同じ年に「はなれ瞽女おりん」という、これも同じく盲目の三味線弾きの旅、女性版で、 こちらは人知れず野垂れ死にしてしまった。
 その骨が映るラストシーンはしかし、不思議に哀しくなかった。なんだかごく当り前のように見え、清々しさもあった気がする。この時代の人にはそんな末路もステータスがあったようにさえ感じた。

 市川昆の「股旅」(1973年)は、そういえば日本のニューシネマ的な青春ロードムービーと今なら表現するかもしれない。

 原田美枝子が体当たりの演技で衝撃的だった「大地の子守唄」(増村保造.1976年)、それからもっと以前の旅の映画というと、高橋洋子がデビューで存在を印象づけた「旅の重さ」(斎藤耕一.1972年)は、その時代の空気を、当時新人の高橋洋子が、旅の途上でかく汗と体臭で身近に伝えてくれるような、 そんな自由と孤独と悲しさを吉田拓郎の主題歌とともに初々しく映画にしていた。
 それは、ぼくのその頃の心にとっては等身大の旅の映画だったような気がする。

 何故だか、その頃の映画のなかには放浪する青春が描かれていた映画が多いのだが、アメリカも例外ではなくて「青春の光と影」だったと思うけど・・ 主人公のジーンズ姿と、走り出す貨車に跳び乗る旅に心の奥から憧れた。

 ジャック ニコルソンが主演した「ファィブ・イージー・ピーセス」(1971年)、
ジーン ハックマンとアル パチーノの「スケアクロウ」(1973年)の心の空洞を埋める放浪も、 痛いほど伝わる空気が満ちていた時代。

 老人が主人公ではあるが、アメリカが素晴らしく思える映画の一つ 「ハリーとトント」(1975年)の猫との旅。旅先で老衰して静かに死んでいくトントの表情も忘れられない。 自分が16年共に居た猫と別れてから、涙なくして見れないシーンだ。

 比較的最近ではアイスランドの作家の映画「春にして君を想う」(1991年)という、
これも老人が主人公で、「ベルリン天使の詩のブルーノ ガンツ」が天使そのまま終り近くに登場する。
 この厳しくも優れたファンタジーは、いつか詳しく書きたいと思っていながら、未だに果たせない(笑)。
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by past_light | 2004-10-20 19:59 | ■主に映画の話題 | Trackback | Comments(3)
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Commented by acoyo at 2004-10-21 17:06
「股旅」「ファイヴ・イージー・ピーセス」、ううん、TVでしか観てませんけど、好きでしたね。後になって友だちに推薦して回ったけど、どうも受けが悪くて……「ファイヴ~」なんて今でも、J・ニコルスンはあれがいちばん好きなんだけど。「股旅」は、そこで初めて市川昆という名前を意識して、「木枯らし紋次郎」の再放送とか観て、ほお、かっこいいと思ったのを覚えてます。「春にして君を離れ」もいい映画でした。母と観に行きました。当家の「母と子の映画教室」向けのラインナップだったので(藁)。
 ほんとうにしみじみくる映画の方が、語りにくいんですね。そういう「いつか書きたい」ものの山です、私は(藁)。
Commented by past_light at 2004-10-22 18:42
受けがわるい映画と言うのは、個性が強いという性格もあるかも知れませんね。
「ファイヴ・イージー・ピーセス」は、いわゆる「痛い」って意味では、かなりのモノだと思いますが、この時代は痛い映画ばかりだったような気もします。
そういえば、「股旅」は脚本に谷川俊太郎が参加しているのですよね。
あの映画は今でも新しいなにかがあるのじゃないかと思います。
木枯し紋次郎はかっこいいです。あの中村さんが未だにかっこよく思えるのですが、こういう真面目なひとが政治の世界では消えてしまうのが政治が庶民の手から離れる由縁でしょう。

>「春にして君を離れ」
という誤字はすごく心理学的で興味深いです(笑)。冗談・・。
Commented by acoyo at 2004-10-22 20:59
スイマセン……恥じ……クリスティの本とこんぐらがって打ってました……。観たのは「君を想う」です。