2004年 10月 13日
ジム・ジャームッシュのデッドマン
(クールでスマート・・陳腐な表現だけど、びったりなのだ・・)
彼の映画はモノクロームの印象が素晴らしい作品が多い。以前、西側の小津の後継者みたいな 言われ方をされたこともあった記憶がある。
確かにそう思わせない作りではないが、やはり新しい感性がキラリと光るタッチだった。
またカラー作品での「ミステリートレイン」は日本の人気俳優ふたりを使っていて、これも面白かった。
先だって観た「デッドマン」は、ジョニー・デップが大人しい会計士の風情で登場して、19世紀アメリカ・・ある西部の果てに職を求めて列車に乗っている場面から始まるが、これは正真正銘のミステリートレインなプロローグで、ニールヤングの電気ギター(というが相応しい)のオールドロックで、ミニマルミュージックを思わせるサウンドトラックが、モノクロームのフィルムとに、かなり溶け合って冒頭から映画のスタイルを決定づけていた。
ちょっとカフカの不条理を思わせるような前半から、不思議なインディアンとの出会いに至ると、観客のぼくらも、ますます夢も現実も境がなくなるような世界の奥へと案内されていく。
西部劇のやや残酷な銃撃場面も、かのサム・ペキンパーとはまったく異質だが変なリアリティがあって、当時のアメリカ西部の無法ガンマンたちのみならず、銃がやたらとぶっぱなされる原点のようなものを感じさせる、そんな現実感も存在している。
傷を負い死に向かうに従って冴えていくような、ジョニー・デップの主人公の閉じては開き・・を繰り返す目蓋と、暗転を繰り返すシーンの繋ぎがシンクロしていて、この映画自体がまるで呼吸しているかのようだ。
ジョニーが演じる主人公の名が「ウィリアム・ブレイク」・・という有名な詩人で画家(英国ロマン派の先駆者・1757-1827)の名を、ただ遊びでつけたものではないようにも思われるが、それからアンリ・ミショーというメスカリンを使って実験的に詩作した詩人の言葉を最初に紹介したりもしているから、やっぱり1960年から70年代の文化でいえば、知る人にとってはドラッグカルチャーのイメージとの共通性を感じさせるかもしれない。
しかしストーリーを理屈で解釈しようとするのは、この映画は特にできない相談だろう。
ジムジャームッシュはそのスタイルと独特のクールなタッチそのもので体験させるような、 映画特有の能力を持つ作家だと強く感じさせる人でもある。
しかしまた、いろいろとそんな内容に触れなくても、 白黒画面のなかに映し出させれる凄い風景に目をみはるだけでも満足させる映画だろう。
特にラストの海に流れていくカヌーの点景を映した・・ ウィリアム・ブレイク、またはターナーの絵・・のような画面は素晴らしい。(2001.1)
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acoyo at 2004-10-13 14:48
ジャームッシュ……うちにはストレンジャー・ザン・パラダオイスのパリの地下鉄広告サイズの巨大ポスターがあります。いつか大きい家に越したら壁に貼ろうと思ってたのに。折り畳んでしまったまま(笑)。
ジャームッシュの映画の画面ってのは、「凄い」より「どっか痛い」って感じがいつもするんですけど、何でだろう。
ジャームッシュの映画の画面ってのは、「凄い」より「どっか痛い」って感じがいつもするんですけど、何でだろう。
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past_light at 2004-10-14 23:35
by past_light
| 2004-10-13 02:21
| ■主に映画の話題
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Comments(2)