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引用よりカタルものナシ
b0019960_3251910.jpg シネアートにフランソワ・トリュフォーの特集をページにしたのもずいぶん前のことになった。以来なかなか続きができないが、別に商売でやっているわけではないから、誰も文句はいってこない(笑)。ただ、「 突然炎のごとく(Jules et Jim)」という映画を外しているのは、当初もう一度観なくては何も言葉が出てこないという気持ちからだった。同じ原作者の「恋のエチュード」は、充分堪能した覚えがあるのに、「 突然炎のごとく」は、まだまだ味わい尽くせない「なにか」が、その一見軽妙にも感じられる映画のタッチやテンポの奥にあることを、絶対的に感じながらも、それは言葉になかなかできないものなのだからだ。
 トリュフォーの評伝を借りて開いて見つけた箇所にあった、トリュフォーの心を打ったジャン・ルノワールの賛辞の手紙を読んで、そのひとつの理由があるような気がした。

 「『突然炎のごとく』は、今までに私がスクリーンで観たなかで一番的確に現代のフランス社会を表現しているように思えるということをあなたに申し上げたく、ペンを執りました。・・中略・・・色恋沙汰は、円卓の騎士たちにとってはとんだお笑いぐさで、ロマン派の作家たちにとっては、涙をこぼす口実です。『突然炎のごとく』の登場人物たちにとってそれはまた別のもので、あなたの作品はその別のものとは何なのかを我々が理解するのに役立ちます。
 それ以外の我々のような男たちにとって、自分たちが女たちとどういう段階にいるのかを知るのはとても大切ですし、女たちにとっても、自分たちが男たちとどういう段階にいるのかを知るのは大切です。あなたはその問題の本質を覆っているもやを晴らすのを助けてくれているのです。そのことと、他にもたくさんの理由から、心からお礼を申し上げます」


 ヌーヴェルバーグの父とさえ言われるルノワールからのこのような手紙に、トリュフォーは深く感動しただろう。
 このような文を読むと、色恋沙汰について語るにも日本人であることの限界さえ感じるのだが、次に引用させて頂く手紙が素晴らしいので、とうぶん『突然炎のごとく』について書くのはやめておきたいとさらに思う。

 「私は七十五歳で、ピエール・ロシェの小説『ジュールとジム』の恐るべきヒロイン、カートの成れの果てです。
 私がどれほどの好奇心をもってあなたの映画をスクリーンで観られる瞬間を待ったかご想像なさってください。一月二四日、私は映画館に走りました。あの暗い場内に座って、むりやり似せてあるのではないか、多少なりとも腹立たしいなぞらえかたがされているのではないかと恐れていましたが、たちまち我を忘れ、盲目的に経験したことをよみがえらせる、あなたとジャンヌ・モローの魔力にとらえられました。
 一連の出来事のすぐ近くにいたピエール・ロシェが私たち三人の愛の物語を語りえたことには、奇跡的なことはなにもありません。でもあなたにはどんな才能があって、どんな類似性があって、私たちの内奥の感情の核心を感じとるほどに事情がわかったのでしょう? この筋書きに関しては、私はあなたにとって唯一真の判定を下せる人間です。他のふたりの証人、ピエールとフランツはもういませんからあなたに「はい」とは言えないのです。愛情をこめて、親愛なるトリュフォー様へ」


■突然炎のごとく  JULES ET JIM
監督・脚本/フランソワ・トリュフォー
出演/ジャンヌ・モロー、オスカー・ヴェルナー、アンリ・セール、マリー・デュボア
原作/『突然炎のごとく』 アンリ・ピエール・ロシェ(ハヤカワ文庫)
撮影/ラウール・クタール
音楽/ジョルジュ・ドルリュー  (108分/1961年・フランス)
■作品紹介サイトhttp://www.herald.co.jp/official/truffaut_honoo_no_gotoku/index.shtml
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by past_light | 2006-06-18 03:27 | ■主に映画の話題 | Trackback | Comments(0)
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