「我々に潜むテロリズム」

 人間の暴力性は、原始的に動物人間の時代から引き継いで残しているものかもしれない。それをほとんど多くは解消してこられなかった。
 外面的には進化したように見えても、内面的には先史時代からさほど進化していないだろう。
 (その暴力も巧妙に機械化され、死んでいく相手の顔が見えず、実感のないまま、死者の数字が数えられる)

 ユングが、ナチス時代のドイツを飲み込んだものが、荒ぶる神のような「元型」の作用というような話をしていましたが、集団心理は普段無意識的に生きていれば、容易にプロパガンダに洗脳されるということだろう。
 動物の群れがなどが同じ方向に移動したりしますが、そういう部分でも動物と同じ思考停止状態はいつでも起こり得るようだ。

 復讐心にかられたテロリストに冷静さを求めるのが難しい、だから同じスタンスで、いやケタ違いの破壊力で追い詰めるのは得策なんだろうか。
 殺戮に麻痺した心理状態を続けていれば、感化される暴力性が伝染病のように国々を覆うかもしれない。
 それは、アメリカの学校で鬱屈していた少年たちに銃を乱射させるかも知れません。

 逃げまどう、どう猛な動物が追い詰められ逃げ場を失えば、決死で向かってくるかも知れません。テロリストも同じだろう。
 しかし、一つだけ違うのは相手は人間だということ。試みれば「会話」もできるということだ(これを平和ぼけと嘲笑する人は多い)。
 理由がなく絶望はないだろうし、死を賭けた復讐もないだろう。追い詰められた表情は見えるのではないか。
 実際上は、死んでいくのはどう見ても市民が大多数にしか見えない。

 テロには、その枝を刈り取り根っこに到達して根絶できるという従来の思考に疑問を持つ人も多い。
 それは、「たんぽぽの種子のように叩けば飛び散る種子で、他の大地に転移し結果として増殖させないか」という視点だ。
(最近はますますこの言葉の重みを感じないだろうか)


 追い詰め絶望させるのは、そのまた絶望的な反応しか生み出さないのではないか。
 「彼らは邪悪な人間だ」、ショートカットで物事を運ぼうとするのは、自らに潜む邪悪さを知らない。

(「対話」とは、一方的に要求してばかりでは成立しないのは意外に忘れがちな常識だ。 相手の話も静かに聴こうという態度は、場の雰囲気、心のオープンさには不可欠だろう)

 イエスが村人に石を投げられる娼婦を助けた時、
「自分だけは、心にやましいことのないと思うものだけが石を投げなさい」と言ったことを、イエスの話を読んでいる国の人は覚えていないだろうか。
 賢明な父親は、子供を叱る時も「逃げ場」を残すのでした。逃げ場と言っても物理的なことではないのだ。

 今の世界は誰でもテロリストに成りうる世界をどうも作ってしまっているような感じがしてしかたない。

 ダライ・ラマは「戦争は一つの選択肢だが、ネガティブな選択はネガティブな結果を招く」と言っていた。
 逆に言えば、ポジティブな選択をすればポジティブな反応と結果を招来する可能性があるとも言える。
 それはすぐには目に見えないかもしれない、多大な時間がかかるかもしれない。
 しかし、掻き回し汚れた水を綺麗にするにも、注意深く静かに待たなくてはならない。
 人類の、世界の度量がためされることだろう。

 ネットで読んだ、マイケル・J・ローズという人のコメントのなかに、「・・思い出してください。『わたしたちが無知であるという目印は暴力、不正、悲劇への私たちの信念の深さ*にあります。青虫がこの世の終わりと呼ぶものをマスタ-(師)は蝶と呼ぶのです。』蝶は青虫の変態から生まれます。 もし愛への跳躍が報復への跳躍に勝るなら人類はこの悲劇から再生することができるのです。」
 という話は、ぼくにはある意味で考案として今でもこころに残っている。

*(そういう習性はなくならない、しかたない、というぼくらの頑固な固定観念・概念と言い換えてもいい)
---2001.12月に書いたものをすこし修正加筆しました。---
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Commented by acoyo at 2004-09-25 23:12
のんきでええ加減な平和論者が振りかざす「話し合えばOK」という対岸の火事故の楽観主義と、真摯に暴力以外の解決を模索する人々の求める「対話」、絶望的な現実を深く認識した上に立つ「対話」というのが、今、ごっちゃにされています。私は前者とは断固闘いますが、後者は何があろうと支持したいと思っています。
by past_light | 2004-09-25 20:33 | ■9.11コラム | Trackback | Comments(1)

過去と現在、記憶のコラム。関連ありなTBはラヴリー。リンクはフリー。コメントはブラボー。


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