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「山谷でホスピス始めました」 山本雅基著
 ある日のラジオ番組のゲストで、「山谷でホスピス始めました」の著者である山本雅基さんの話を聞いたのが読むきっかけだ。
 常識的にはちょっと驚いてしまうその経緯を聞いていて、なんとも言葉にならなかった。
 感心したとかなんていうのもどこか恥ずかしい。
 (ちなみに山田洋次監督の映画「おとうと」の題材のヒントとなった著作ということらしい)

  彼は、いわば無一文から、ほぼ借金のみで、山谷のドヤ街を住処とする人たちの老後に、安心や希望を提供したいというシンプルな動機で、「きぼうのいえ」というホスピスを始めた。
 それには運命的な奥さんとの出会いとか、一億以上の借金の保証人を無謀に引き受ける神父とか、
そういうサポートもなくてはできなかったことだが、結果不可能のようなことを可能にしてしまった。

  といって、山本さんは強靭な人かというとむしろ繊細で弱く、幾度も挫折や鬱や過労で倒れたりと、そういう流れを含みつつのことだ。
 それでも話を聞いていて、なんとも柔らかなところへと到達していく人柄への驚きもあった。
 著作を読んでいてその詳細がだいぶ理解された。

  入居した山谷の老人たちとの日々の出来事、その彼らの辿った人生の時間へと思いを馳せる著者。
 そこには何冊も本のできそうな人生の物語が確かに感じられ、ただただ黙して読者も読むしかない。しかし、当の彼らが饒舌に語る訳ではない。むしろ語らない過去だからこそ、対面する者が察し深く感じとるものだと思われる。

 そのホスピスの日々の想像を絶する大変さももちろんのことだけれど、ある意味では、いまのこの社会が失った日だまりの日々の日記でもある。
 すべてはそして、山本さんが著作の最後の方で言う、この言葉にすべて集約されている感じがした。

 「ほんの小さなつまづきで人生を棒に振ってしまうような罠が、この社会にはいくつも張り巡らされている。
そういうひとたちにこそ、人生の最後に生きる希望を取り戻し、悲しみを癒し、希望とともに次のステージ、すなわち死の世界に進んでいくための場所が必要なのだ」
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by past_light | 2010-03-30 20:31 | ■コラム-Past Light | Trackback | Comments(0)
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