遠い過去を語る・・クリクリのいた夏

 第一次大戦後のフランス、戦場の地獄を目の当たりにし、心に深く刻んだだろう男が、ある田舎の沼の側にある小屋を引き継ぐ。
 小屋の持ち主だった老人と出逢った日が、その彼を看取る日でもあった。

  原題は「沼地の子供たち」で、日本でつけられたタイトルは、あきらかに商業的な成功を願ったものだが、これは許される範囲のものだ。いい映画を多くの人に観てもらいたい、という気持ちが読み取れないわけではない。

 まだ幼い少女だった頃のクリクリの記憶として、身近に暮らしていた大人たちの、まずしいとはいえ、このうえなくのどかだった日々のエピソードが語られる。 

  登場する人には今で言えば、社会が排除したがりそうな「無能の人」だが、愛すべき人たちが、ささやかな日々の幸せを感受して生きている。
  語られる時代のこの田舎には、そういう彼らの居場所はちゃんとあった。しかも四季の実りを惜しみなく与えてくれた「自然」と同じように、われらが「暮らす」共同体には誰しも欠かせないのではないかという、作り手のあたたかい視線がある。

 それはまた、沼地を離れ事業家として成功しながらも、家族の中には居場所を無くし、沼地の暮しを忘れられない老人にも向けられた視線・・。
 「裕福なのを恥じることはない」

  映画の終わりに老女であるクリクリが言う。
  「それもこれも昔の話です。今はもうみんなその頃の大人たちはいないのです。想い出にはわたしの脚色もあるでしょう」「沼は今では埋め立てられて大きなスーパーが建っています」

 いつもにこやかに正装して現れる本とジャズ好きの友人、労働は苦手だが、エスカルゴ採りにピクニックのようにうきうきと同行する彼が、開いた本の一節を紹介する。

  「自由とは好きなように時間を使う事だ。何をし、何をしないのか、自分で選び、決めることである。」

 遠い過去にみんなが集まった「沼地」は象徴的だ。現代では跡形もなく埋めつしてしまったのか・・。

■監督…ジャン・ベッケル 脚本…セバスチャン・ジャプリゾ 撮影…ジャン=マリー・ドルージュ 音楽…ピエール・バシュレ 1999年フランス映画  (1時間55分 )
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Tracked from befounddead at 2005-04-06 01:16
タイトル : クリクリのいた夏
LES ENFANTS DU MARAIS (1999年フランス) 2005/3/18@早稲田松竹 なんていうか… スローライフ。 つうか、自給自足。 あらすじはどこかほかのところで。 フランスで200万人動員、とかって、フランス人的に「昔はよかったねー」ていうことなんでしょうか。じゃあ昔のフランス人(田舎の)ってこんな暮らしをしてたんでしょうか。 でもわたしはこういう生活に愛着や憧れを特に持ち合わせてはないので 日常から逃れて1ヶ月、とかだけならまぁしてやってもいいかな...... more
Tracked from Saturday In .. at 2005-05-04 13:36
タイトル : クリクリのいた夏
1999年 フランス 監督:ジャン・ベッケル 出演:ジャック・ガンブラン     ジャック・ヴィルレ     ミシェル・セロー     アンドレ・デュソリエ 第一次世界大戦後のフランスの片田舎の沼のほとりで自給自足をし 平穏な日々を楽しく生きる住人たちを豊... more
by past_light | 2004-11-21 21:08 | ■主に映画の話題 | Trackback(2) | Comments(0)

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